『武雄競輪開設74周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:5月11日

 武雄競輪場で令和6年能登半島地震復興支援競輪・大阪・関西万博協賛・開設74周年記念「大楠賞争奪戦(GIII)」が、5月11日に幕を開けた。初日のメイン特選では、地元の九州勢が4車で結束。すんなりした展開にはならなかったが、地元の山田庸平が直線で目の覚めるような伸びを見せて1着。場内を沸かせた。また、一次予選では、地元勢から山口敦也、金ヶ江勇気の2人が白星発進した。シリーズ2日目の5月12日には、二次予選で勝ち上がりが争われる。
 記念シリーズは開催中の毎日、500円車券購入者先着プレゼント、未確定車券抽選会、井上茂徳さん、佐々木昭彦さんらによる予想ステージなどが予定されています。また、5月12日のシリーズ2日目には、ガールズケイリンの日野未来選手、高木真備さん、野原美咲さんらのガールズトークショーもあります。武雄競輪場では、みなさまのご来場をお待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

伊東翔貴選手
伊東翔貴選手
 岩谷拓磨が赤板2コーナー手前で押さえて、その上を静岡勢が出る。打鐘で日高裕太が主導権を握り、3コーナーから伊藤稔真がインを進出して、岩谷と併走になり最終周回へ。外併走から岩谷が仕掛けて、後方で脚をためていた伊東翔貴(写真)は、凝縮された前団にまくりで迫る。スピードの違いであっさりと伊東が、まくり切った岩谷をバックでとらえて、佐藤慎太郎の追走。3番手以下は大きく離れて、福島両者のワンツーは伊東の1着。
 「岩谷君が前を取ると思っていたんですけどね。岩谷君の後ろを取らないとマズいなって思っていたので、最悪の並びかなって思ったんですけど。みんな脚を使っての一発なので。あれ(伊藤が内に行って)で行きやすくなりました。ホームの風が強かったです。バックは流れる感じでした。思っている以上に自転車は進んでくれました」
 伊東のまくりごろで、踏み出しに集中した佐藤慎太郎が危なげのない2着。
 「(伊東は)すごい掛かりでした。後半もタレていなかった。差せると思ったら、(最終)4コーナーから伸びていった。(自分の)調子は悪くないと思うんですけどね。前回と同じくらいだと」

<2R>

 久田裕也、根本哲吏の順番で切ったところを、柿本大貴が打鐘手前で先頭に立ち主導権を握る。根本が4番手に収まり、久田が6番手の一本棒。最終ホームから青柳靖起が反撃に出る。それに呼応するように久田、根本も合わせるが一息。逃げる柿本の番手の藤原憲征が、別線のスピードを見極めて3コーナーから踏み込む。合わせ切った藤原が、2月以来の白星を挙げた。
 「(久々の1着で)うれしいですね。(先行した柿本の頑張り)もうそれ以外ない。根本が切ってくれたのが良かった。それで(柿本は)楽に出られたんじゃないかと。こんな展開は思ってもなかった。僕らは泳がされるし、(別線が)けん制して行かれなければチャンスはあるんじゃないかと。最後は自分で踏んだんでキツかった。でも、あそこまで(柿本が)行ってくれて、ラインで沈んだら申し訳ない。最近は若手にモマれて練習しているんですよ」
 外がかぶっていた石川雅望は、落ち着いて直線で踏み込んで2着。
 「本当に柿本君とノリさん(藤原)のおかげです。車番的に厳しかったけど、ノリさんが取ってくれた。風が強いなか柿本君が駆けてくれた。3番手の自分でも、ホームはかなり向かってるのが感じるくらいだった。最後は抜きにいったんですけど力不足でした」

<3R>

 打鐘手前で竹内翼を押さえた橋本瑠偉は、貴志修己の仕掛けを冷静に見極める。最終ホームで中近ラインを受けて、橋本が中団を確保。貴志が駆ける。態勢を整えた橋本は、2コーナーまくり。坂口晃輔のブロックでスピードが鈍ったが、橋本が乗り越える。直線で外を踏んだ佐藤友和が、楽に橋本を交わした。
 「(橋本が)落ち着いていましたね。走る前から自信もある感じでしたし、まくりでも流れでカマシもあるかなって感じでした。スタートでいい位置を取れたので走りやすかったんじゃないですかね。でも、貴志君に読まれていたのか、踏まないで出られたので不安はあった。けど、橋本君は余裕があったんでしょうね。すんなり出させていましたし、仕掛けも早かった。車間を詰めすぎると車輪を払われるので、余裕をもって車間を空けていました」
 4番手からのまくりでラインを上位独占に導いた橋本瑠偉は、元ホームで上々の滑り出し。
 「貴志君の後ろからが良かった。竹内さんが切ったところを切って貴志君待ちだったんですけど。(最終)ホームで飛び付くのに失敗して脚を削られたんですけど、まくれた。(日本選手権の)疲れが残っていて脚が重い感じですけど乗り越えられた」

<4R>

阿部力也選手
阿部力也選手
 赤板過ぎに前受けの坂本貴史も踏み上げるが、小畑勝広が押さえる。そこを順番通りに叩いた松本秀之介が、打鐘過ぎから先行策に出る。坂本は7番手に置かれて、松本がリズム良く風を切る。最終2コーナー手前から坂本がまくりを打ち、中団の関東勢を乗り越える。直線で松本に並んだ坂本の外を阿部力也(写真)が伸びて突き抜けた。
 「松本君にもあそこで出ていかれたんで、かなりヤバい展開かなと。(坂本のまくりは)どうかなと思って見ていた。自分は外を踏むか、早めに内を突っ込むかでした。けど、最後まで(坂本)貴史を信じて付いていきました。(脚の感じは)だいぶいいかなと。(日本選手権の)最終日に清水(裕友)君と古性(優作)君にセッティングをいじってもらって、真逆の感じにした。今回も清水君にアドバイスをもらって全然いいですね」
 一本棒の7番手に置かれた坂本貴史だったが、まくりで前団をのみ込んで北日本ワンツー。この2着を浮上への足がかりにしてほしい。
 「小畑君が切ったら、松本君が行くのもわかっていた。本当は(小畑を)突っ張りたかったんですけど。(内容を重視して)勝ち負けにこだわらないようにと思っていた。でも、こだわってしまった。ただ、これで吹っ切れた。(最終)1コーナーで詰まったんで、そこでナメるように行ければ良かった。バックを踏んでからだったので、そこは反省です。感触がいいのに成績がついてこなくて弱気になっていたところもあったんで、これをキッカケに上がっていければ」

<5R>

野口裕史選手
野口裕史選手
 土生敦弘、大西貴晃の順番で切って、野口裕史(写真)は打鐘3コーナー過ぎからの先行策。最終ホームではうまくスピードに乗せた野口は、後続を一本棒にして風を切る。5番手にいた箱田優樹がインを進出して、4番手で外に浮いた大西は土生に合わせるように3コーナーから踏み込む。野口ライン3番手の土屋壮登はいっぱい。別線を振り切った野口は、二の足で中田健太も退けて逃げ切り勝ち。
 「(別線が)切った上を行こうか、切って切っての上を行こうかって感じでした。土生君が切ってすぐに行くか、大西君次第だったんですけど。大西君は絶対に動く選手なのでそこを信じてじゃないですけど、それで切ってくれたので。飛び付かれないように上に上がって、そのあと下り過ぎた。振り子の原理じゃないですけど、1回ああなると止まらないのでずっと揺れていました(笑)。風はありましたけど、(前回の)平よりも軽い感じでしたね」
 野口がつくった波に酔わされながらも、中田健太は1輪差まで詰めての2着。
 「メンバー的にも野口さん待ちになると思った。土生君も後ろ攻めは得意としていないと思う。(野口は)抜けない感じでしたね。周りも(野口の)ペースに酔っていたと思うんですけど、番手も酔っていました」

<6R>

金ヶ江勇気選手
金ヶ江勇気選手
 上川直紀を押さえて酒井拳蔵が打鐘過ぎに先頭に立つが、立部楓真が素早い反応ですかさず巻き返して叩き切る。酒井が番手に飛び付くが、金ヶ江勇気(写真)がキメて番手を守り最終ホームを通過する。3番手に下げた酒井に鷲田佳史が続き、森安崇之は5番手になる。8番手に陥った渡邉雄太は、バックでも仕掛けられない。逃げる立部の後ろで車間を空けていた金ヶ江が、詰めながらきっちりと差し切った。
 「(立部は)弟デシだし、一門は2人しかいないので緊張しました。(番手を)死守できるようにと思っていた。そしたらまさか(酒井が)飛び付いてくるとは。そこはしっかりと。あとは(立部が踏んだ)距離も長かったんで、後ろをしっかりとけん制してと。ワンツーを決められたのはデカいですね。中4日でも、4日間ともにフルに練習した。明日(2日目)は一段と回復して、いいんじゃないかと思います」
 兄デシを連れて先行策に出た立部楓真は、2着に踏ん張って地元記念の一次予選をクリアした。
 「(周回中は)渡邉さんが一番後ろだったんで、自分的には一番良かったです。ジャンのところでカマしに行くところは良かった。けど、その前の渡邉さんが切りにいくところで、(別線に)入られそうになった。今日(初日)はあんまり先行が残ってなかったのもわかってたんで頑張りました。キツいレースだったんで、明日からは楽になると思います」

<7R>

 赤板手前で誘導後位に入った齋木翔多は、小原丈一郎の上昇を阻んで突っ張る。3番手が川口聖二と小原の併走になり、打鐘を通過する。中団のもつれをしり目に、齋木がペース駆けに持ち込む。最終ホームでも小原、川口はからんで決着はつかない。番手の桐山敬太郎にとっては好展開。後続をけん制しながら4コーナーから追い込んだ桐山が1着。
 「2車でも齋木のレースはあれなので。前に出たら誰も出させない感じで、いつも通りと言えばいつも通りだった。後ろでうまく併走してくれたので、しめしめと思いながらでした。(齋木は)いい時は(最終)バックからケツを上げて踏み上げる。今日(初日)はそれができていたから調子がいいんでしょうね。2車だったので内をしゃくられないように、外はかぶらないようにってどっちも気にしながらでした。(落車して状態が悪かったときは乗りこなせなかった)2、3年前のフレームに乗れるようになったので、体が戻ってきたのかなって。結果が出て良かったです」
 最終4コーナーで小原を弾いてようやく踏み場を確保した川口聖二は2着。
 「後ろに申し訳なかったですね。齋木君も叩かれたら厳しいと思って突っ張ったと思うんですけど、小原君も大槻(寛徳)さんが付いていたので叩き切ると思っていたんですけど。これはよく見る飛ぶパターンのやつかって思いましたけど。(小原に押し込まれたが)熱くなりすぎず、そこは落ち着いていました。齋木君のペースがうまくて飛ばせなかったですね」

<8R>

島川将貴選手
島川将貴選手
 赤板2コーナー手前でじわりと押さえて先頭に立った小池千啓がペースを握り、島川将貴(写真)は7番手でタイミングを取る。そのままレースは流れて、打鐘4コーナーで小池が踏み上げて駆けるが、島川も仕掛ける。紫原政文は付いていけず、番手の稲吉悠大も離れ気味。最終2コーナーで島川が出切り、島川、稲吉に磯島成介がスイッチ。離れながら追走いっぱいの稲吉を乗り越えた磯島がまくりで迫るが、1着は島川。
 「(順番で小池ラインには)付いていかないでもいいかと。付いていって変になるよりは、一撃で行った方がと。それで(様子を)見ました。最後タレたけど、(最終)バックで踏み上がった。最近のなかでは一番いいかなと。ハンドルを微調整して、久々にいい感じでした」
 結果的には島川ライン2車をスルーしてからのまくりになった磯島成介が2着。
 「走り終わってからですけど、(最終)ホームで行けば良かった。着は変わらなかったかもしれない。でも、ホームで風を切った方が、明日(2日目)にもつながったと思う。状態は問題ないですね」

<9R>

 前受けの志田龍星は北日本勢を出させて、3番手で畝木聖とからむ。畝木が踏み込むと田口勇介もペースアップ。畝木が3番手に入り志田が下げ、そこを赤板2コーナーから蒔田英彦が仕掛ける。打鐘3コーナーで飛び出した蒔田が緩めて、志田にとっては仕掛けごろ。2センターからカマした志田が主導権を奪い小気味よく駆ける。4番手以下は離れて圏外。番手の岡崎智哉が、ゴール前で差し切った。
 「自分が前だったら行ける感じじゃないところで(仕掛けて)行ったのでキツかった。踏んでからは、前を見ることしかできなくて必死でした。(最終)バックで後ろを確認したら小谷(実)がいて、その後ろの気配もなかったのでもう決まったかなって。正直、キツくて武雄の直線っていうことを考えられていなかった。もっと別線が強くて紙一重の勝負だったら失敗したかもしれないですね」
 一度は別線とからんだ志田龍星だったが、流れも向いて持ち前のスピードが生きた。
 「車番が良くなかったので、取れたところからっていう感じでしたけど。前が取れたので一番シンプルでいいのかなって。順番が来たら行こうと思っていたんですけど、キツくて全然踏めていなかった。なんか重くて進んでいる感じはしなかったです」

<10R>

神山拓弥選手
神山拓弥選手
 赤板1コーナーで高橋和也が切って出ると、前受けの根田空史は上野雅彦ラインも送り出して7番手まで引き切る。打鐘を通過して上野雅彦は、前との車間を大きく空けて根田を警戒する。3コーナー過ぎに根田が仕掛けて、上野も合わせて踏み込む。最終ホームでは根田と上野の踏み合いも、根田が楽に出て神山拓弥(写真)が続く。上野は3番手に入って、その後ろが高橋でバックを通過。逃げる根田の掛かりも良く、番手の神山が差し切って人気の決着。
 「(根田は)強いんで踏み出しに不安があったけど、思ってたより余裕があった。そこは自分でも収穫ですね。たまたまですけど、なんとか余裕をもって追走できた。(悪い時は前の選手が)踏み出す前に踏んじゃったりするんで、そこを踏まないでっていうのを意識していた。今日(初日)に関しては1着を取れたし、自分の課題のところがクリアできた。明日につながるかなと」
 前回の日本選手権のバンクコンディションが先行選手に厳しかっただけに、ここでは根田空史が本来の機動力で別線を完封した。
 「中団で粘って上野君にずっとフタをされる方が嫌だった。それなら(7番手に)引いて、いつ来るんだろうって思わせた方が展開は向くかなと。最初は踏んだ瞬間、出が悪いって思ったら、上野君も出ていってた。そのあとは自分も伸びていった。出切れるなっていうのがあったんで回しました。(最終)4コーナーからキツかったけど、(前回の)平に比べたらマシですね。それでもまだ疲れが残っている感じがあって、アップから体がシャキッとしない。今日(初日)の1走で刺激が入って、パリッとしてくると思います」

<11R>

 細切れの4分戦で別線が順番通りに出て、前受けの伊藤颯馬は打鐘手前から踏み上げる。伊藤が最終ホームで主導権を奪い、山口敦也、離れ気味だった佐々木翔一まで追いついてラインで出切る。九州勢に切り替えて2コーナー過ぎからまくった朝倉智仁は、3コーナーから空いたインに切り込んで山口を押し上げる。弾かれながらも朝倉をキメた山口が、伊藤を差し切って地元記念を1着スタート。
 「(伊藤のスピードは)良かったですね。自分はスロースターターなので今日(初日)が決勝だと思って走った。(最終)4コーナーから焦った。技術不足ですね。もうちょっと引きつければ良かった。(朝倉を)早めに飛ばそう飛ばそうって思ってしまった。(状態面は)3月の(武雄の)GIIIよりもいいと思います」
 仕掛けどころを逃さずに主導権を奪った伊藤颯馬は、宿口潤平とは微差で2着に逃げ残った。
 「(どこから仕掛けるかは)あまり決めずにでした。道中も楽だったので平よりも全然いいですね。長い距離をいくとキツいですけど、踏めていたと思います」

<12R>

山田庸平選手
山田庸平選手
 周回中は7番手にいた深谷知広を出させず、嘉永泰斗が突っ張ってそのまま先行態勢を取る。5番手は清水裕友が確保して、単騎の佐々木悠葵は7番手。深谷は8番手になって打鐘を迎える。ペースを握った嘉永がなかなか上げずにいると、清水が3コーナー過ぎから叩きに出る。抜群の加速で清水が出切るが、稲川翔が嘉永に弾かれる。その内を最終2コーナー手前から北津留翼が押し上げる。清水ラインに続いた佐々木、さらには深谷も外を襲い掛かる。山田庸平(写真)は、バック付近では7、8番手。清水をとらえた佐々木が直線で抜け出すも、“鬼脚”で強襲した山田庸がゴール寸前で追い込んで1着。
 「周回の並びが(想定していたのと)違いましたね。余裕はなかったんですけど、体が動く方にと。(別線に)出られたんで、早めに外を仕掛けてっていうのも頭には入れていた。ただ、かぶってたのもあった。それでもゴール勝負ができたんで良かった。最近は練習がまともにできてないので、体の痛みとかもあって万全ではないけど。いい方に向いていると思います。伸びている感じもあったし、タイムも出ていて感覚的にも悪くなかった。2、3、4月よりはいいです」
 単騎の佐々木悠葵は最終的に清水ラインに乗って、最終2コーナー過ぎからまくり上げて2着。
 「(九州勢が)突っ張ると思ったんで、中団、中団でと。そしたら清水(裕友)さんが踏んで、稲川さんが離れていたんで行けた感じです。あとは落車しないようにでした。清水さんが無理くり行ってくれて、展開が自分に向いた。でも、感じもいいと思います」
 深谷マークの浅井康太は、深谷の余力を見極めて追い込んだ。
 「キツいレースでしたけど、なんとか3(着)でした。(深谷が後ろからになって)展開的には厳しいかなと。清水君が行ったところを深谷君も仕掛けて、そこはピリピリしました。自分はゴールまでモガき切れたけど、キツかったしまだまだですね。ただ、流れに乗りながら走れている。怪我もあって状態が悪いので、もう少しケアしたい。でも、こういうなかで走ることも大事なので」