『第24回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編
 
配信日:12月9日


 第24回全日本選抜競輪が閉幕した。今年最後のタイトルを巡って力と力、技と技、意地と意地がぶつかりあった決勝戦。勝利の美酒に酔いしれたのは三宅伸だった。石丸寛之の力強いまくりを差して悲願のG1ウイナーの称号を手に入れ、96年以来となる三度目のグランプリ出場を決めた。これで9名のGP戦士が出そろい、暮れの大一番に向けて競輪界も大きく動き出す。


決勝戦・レース経過

 号砲で渡邉晴智が飛び出し、誘導を追うも、更に三宅伸が踏み上げて誘導員後位へ。これで岡山コンビが正攻法。海老根恵太-渡邉の南関勢が続き、荒井崇博-加藤慎平が中団。山崎芳仁-佐藤友和に兵藤一也が続いて周回が進んでいく。
  赤板前の四角から荒井が上昇を開始。前受けの岡山勢を押さえ込む。石丸は車を下げ、荒井が誘導を使ったまま後続の出方を窺うと、打鐘と同時に山崎がスパート。佐藤まで出切ったが、兵藤は踏み遅れて荒井が三番手にはまり込む。荒井後位が加藤と兵藤でもつれたところを、海老根が巻き返し山崎に襲い掛かる。佐藤が海老根をブロックするも、その外を海老根が踏み込み山崎を捕らえ切った。しかし隊列が短くなったところを満を持した石丸が渾身のまくりを放つと、山崎を捕らえた海老根を更にまくり直線へ。粘り抜く石丸を好追走した三宅がゴール寸前で捕らえて、デビュー20年目で歓喜のG1初優勝を決めた。石丸が2着、まくり粘った海老根が3着でヨーロッパ車券。

表彰式
歓喜の瞬間
表彰式
歓喜の瞬間
ゴール
ゴール



<3R>
稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
   昨日、打鐘から駆けて押し切った稲垣裕之(写真)が、今日も人気に応えて主導権を握り、堂々と勝利を収めた。
  「特に作戦は考えていなかったけど、落ち着いて仕掛ければ主導権は取れると思っていた。濱田君がそれほど掛かってなかったので、そこを叩いちゃえばペースに持ち込めると思ってました。昨日、今日とようやく自分のレースができた感じです」


<4R>
太田真一選手
太田真一選手
   連日、厳しい展開に追い込まれた太田真一(写真)がようやく地元で1勝。藤田竜矢の逃げに乗り、絶好の態勢をものにしてファンの期待に応えた。
  「今回は展開が向かなかったけど、先行屋とは心中する覚悟で走ってるから、ある程度は仕方ないと思います。最終日に何とか勝てて良かった。本当に状態は良かったので、今日も高木さんにうまく内に入ってこられたけど踏み勝つことができた。来年はもっと上を目指せるよう、しっかり課題を克服していきたいですね」


<5R>
宗景祐樹選手
宗景祐樹選手
   小嶋敬二が番手の競り合いを尻目に逃げ切るかと思われた。しかし、勝ったのは宗景祐樹(写真)。村上博幸との番手争いに敗れたものの、三番手をキープすると最後は気迫で突き抜けた。
  「本当は競り勝ってしっかりと小嶋さんに付いていかないと。今日は着は良かったけど、競り負けたし内容がだめですね。最終ホームで踏み遅れて引かざるをえなかったし、村上君が離れていた分向こうが最後にタレたからね。あれがピッタリと(小嶋に)付いている展開だったら逆に自分が離れていったはず。脚もそうだけど、まだまだ技術が足りない」
  小嶋敬二は最後に失速して3着。早めの先行になったとはいえ、実力を考えれば逃げ切りたかったところだ。
  「今日は勝ちたかったけど、全然踏み上げていけなかった。今回は四日間プレッシャーがあった。でも、そんな中、最終日に先行できたし、次につながってくれれば」


<6R>
村上義弘選手
村上義弘選手
   松岡健介が永井清史の仕掛けを全開で突っ張って封じる。完全に近畿勢のペースとなったレースは村上義弘(写真)が松岡の気持ちに応えて1着で締めた。
  「松岡君の気持ちが嬉しかったね。彼も調子が良かったみたいなので、中団から自分の仕掛けをしてくれればいいと話していたんですが。長塚が3コーナーで来るようなスピードなら放り上げて止めにかかったんですけど、まくり追い込みのような形になったので、仕方なく前に踏みました」
  出切れず終わった永井清史は、「今日も先行しか考えていなかったけど、あそこから突っ張られては…」と悔しさを隠せない。


<7R>
山口幸二選手
山口幸二選手
   先行屋のプライドが激突。浅井康太と武田豊樹が残り3周からけん制し合ったが、最終主導権を握ったのは浅井だ。この番手から山口幸二(写真)が抜け出した。
  「今日は浅井が強かったね。(浅井と武田が)早い段階からやり合って僕も苦しかったけど…」
  浅井康太は「次の競走に繋がるよう、今日はどんな展開になっても先行することしか考えていませんでした。今回は腰の状態が良くなったのが何よりです」とふり返った。


<8R>
加倉正義選手
加倉正義選手
   太田に続いて最終日を飾りたかった平原康多だが、今日も見せ場を作れず。「4日間、他のラインのマークがきつくて自分の走りができなかった」と苦しい胸中を空かす。
  1着は会心のまくりを放った井上昌己だ。巧みな中団取りから早めに仕掛け、後続の追撃を振り切る。
  「(加倉に)差されたかと思いましたけどね。今日はイン粘りも考えたけど、まさかあんなにスンナリの流れになるとは意外でした。この後はグランプリに向けて仕上げていきます」
  加倉正義(写真)は好展開を生かせず、思わずため息をつく。
  「もったいないですね。(井上)昌己が出切った時点で、差せると思ったんだけど。実際、踏み出したタイミングはバッチリだったはずです。落車明けで状態は良くないけど、1着が何よりの薬なのに自分から放棄しているようなものですね(苦笑)」


<9R>
小倉竜二選手
小倉竜二選手
   新田祐大のカマシ先行に新田康仁が襲いかかるハイスピードレースとなったが、バックから友定祐己が快速まくりで前団をひと飲み。
  「今日は粘るつもりだったんだけど、北日本も作戦が分かっているのか飛び付かれないようなスピードで踏んできましたね。新田(康仁)さんの巻き返しが早くてビックリしたけど、詰める勢いで一気に行けた」
  勝ったのは小倉竜二(写真)。「友定が強かったよ。僕も付いていて楽だったし、何より踏み出しが軽かったので、交わせる手応えはありました」。


<10R>
渡邉一成選手
渡邉一成選手
   グランプリ出場に一縷の望みをかける紫原政文は後方に置かれる苦しい展開となったが、気迫のまくりで3着に食い込む。
  「北日本が作戦を練ってくるだろうけど、スピード、展開を全て工夫して臨めば勝てると信じてました。3着になってしまったけど、僕の運が強ければグランプリに出られるでしょう」
  別線になった北日本は流れの中で連係する形となった。渡邉一成(写真)が菊地圭尚を叩いてカマすと、伏見俊昭を振り切って久しぶりの1着。
  「今回はワールドカップからの転戦でしたけど、それまでに練習はできていたので不安はありませんでした。実際、感じも良かったし、開催中に疲れは取れていった。オリンピックから戻って初めて1着なので嬉しいですね」


<11R>
石丸寛之選手
石丸寛之選手
佐藤友和選手
佐藤友和選手
   三宅伸が初タイトルを手にした決勝戦。三宅のVの立役者となった石丸寛之(写真)は、まさに石丸らしい力強いまくりでスタンドを湧かせた。初めてのG1決勝で力を出し切る競走を披露し、「差されたのは(三宅)伸さんだから仕方ない。今までも伸さんの後ろから優勝した人はたくさんいるし、勝ってくれて本当に自分のことと同じように嬉しいですよ。初めての決勝だけど、それほど緊張感はなかったですね。何となく、高校でインターハイに出たとき、リレーですごく硬くなったのを思い出しました」と充実感溢れる笑顔を見せた。
  山崎芳仁とのタッグで初タイトルに挑戦した佐藤友和(写真)は勝利を逃して複雑な表情を見せたが…。
  「2コーナーで内に差しちゃいましたね。あのまま抜けても、山崎さんと合っちゃうだろうし、厳しかったでしょう。仕掛けとしては最高だったけど、海老根さんが強すぎました。持っていった時は止められると思ったんですけどね。それでも賞金でグランプリに出られて良かった。まだ先のことは考えたくない。この後は1週間ぐらいオフにすると思います」
  連日、好回転を見せていた荒井崇博だったが、今日は見せ場を作れず。
  「兵藤が遅れているのが見えたので、心の中で謝りながらそこで勝負しました。友和がサッとでるのかと思ったんですけどね」
  荒井に託した加藤慎平は兵藤一也とからんでしまい万事休す。
  「今日は展開負け。仕方ないですよ。もちろんチャンスが来れば勝つ自信はありました。それよりも、G1の決勝戦で戦える手応えをつかめたのが何よりです。来年は加藤慎平の一年にできる自信が、少しだけありますよ(笑)」
  山崎芳仁は「どうしたのっていう位、スピードが乗らなかった。調子自体は問題なかったんだけど。思ったより内が重かったせいかな」と不本意な結果に終わったレースを分析する。
  動きが光った海老根恵太は、「山崎の番手で粘るか、緩んだところをカマす作戦でした。場所によっては友和が番手から出ちゃうかなと思ったけど、うまく見えないところから行けました。踏み出しは良かったけど、山崎に合わされて、出たところで脚が一杯でした」と作戦を明かす。

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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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